11月7日(金)
5時間目。本校では研究授業が実施されました。
2年生保健体育科、テーマは「跳び箱」です。



と聞くと、昔ながらの体育の風景を思い浮かべる方も多いでしょう。でも、この日の授業は一味違いました。跳び箱を跳べるようになることが目的ではなく、仲間と対話し、アドバイスを出し合いながら学びを深めることがゴール。そこにICT機器も加わり、体育館はまるで "学びのスタジオ" のようでした。
授業を担当してくれたのは中堅の先生です。若手の先生が力量を試すために研究授業を行うことはよくありますが、本校では中堅教員が提案性の強い挑戦的な授業を公開してくれるところが強みです。指導案検討会を経て、今日の授業に臨みました。



単元の最後には班ごとの演技発表が予定されており、今日はそのリハーサル。班ごとに跳び方を考え、演技に仕上げる過程で、タブレットで撮影しながら「もっとこうしたらいいんじゃない?」と対話を重ねる子どもたち。参観者は、跳び箱の技術ではなく、子どもたちのつぶやきや学びの姿、そして授業者の支援を読み取ります。
印象的だったのは、「やったぁ!」という声が響いた瞬間です。跳べた本人はもちろん喜んでいましたが、同じ班の仲間から歓声があがり、拍手が起こるほど感動的な場面でした。しかし、その裏には授業者の先生の絶妙な支援があります。「何がポイントだった?どんな練習をしたかな?」という問いかけに「うさぎ跳びだ!」という声があがり、班内で基礎練習が始まりました。指導ではなく支援へ。"教え上手"から"学ばせ上手"へ、指導観の転換を感じる場面でした。
授業者は、何度か班活動を止め、全体に語りかけました。「こんなことをしている班があったぞ」と学びをシェアする場面もありましたが、特に印象的だったのは「演技について困っていることがあったら、仲間に聞いてみてください」という声かけです。
対話的な学びとは、教える側・教えられる側という立場が生まれる教え合う関係でも、互いの主張を述べ合う関係でもなく、「どうすればできるか教えて?」「何に困っているの?」と互いに聴き合う関係だと私は考えます。この気持ちが互いの学びを支え合い、協働を生むのではないでしょうか。
"教え合う・話し合う"から"聴き合う・支え合う"へ、学習観の転換に気づかされる場面でした。

授業後の研究協議では、参観者が担当した班や生徒の学びを出し合い、授業を再現するように交流。活発な意見が飛び交いました。教科の専門性にしばられるのではなく、子どもの学びに注目する視点。まさに「授業者ではなく参観者の力量が試される研究授業」でした。協議の最初と最後には教頭先生が、討議の視点や指導案検討の様子、さらには「子どもの学びを中心とする」授業観への転換についてお話をしてくださり、協議をまとめてくださいました。終了後には、「自分の授業にどう活かせるか」まで議論を深めたいという声もあり、次回への期待が膨らみます。

さらに、11月10日には、研究授業と研究協議を参観していただいた大阪府教育センターの指導主事から、「深い学び」と「目指す子ども像」をキーワードに指導助言をいただきました。「なぜ跳び箱のポイントは、うさぎ跳びなのか?」という問いを投げかけられ、私たち教職員もハッとしました。授業の中で、生徒自身がその意味を考え、言語化できること、そこに深い学びの本質があります。指導案には目指す子どもの姿を行動レベルで明記すること、単元全体で今日につながる布石を打つことの重要性も示されました。
府の指導主事が年間を通して支援し、週をまたいで本校にカスタマイズされた助言をいただける。こんな贅沢な研修はそうそうありません。
金曜日から月曜日まで、まるで「3泊4日の授業づくりの旅」。とても有意義な時間でした。
(ちなみに私は、日曜日に三重大学附属中学校の研究発表会にも行ったので、今、完全に飽和状態です笑)
体育館で跳ねたのは、跳び箱だけではありません。アイデアも、学びも、そして子どもたちの心も、先生たちの意識も、大きく跳ね上がった研修会でした。
挑戦的な授業を公開してくれた授業者の先生、的確な助言をくださった大阪府教育センターの指導主事、そして研究協議で熱心に語り合った先生方に感謝します。
何より、仲間と支え合いながら挑戦した当該クラスの生徒のみなさん――あなたたちの学ぶ姿は、この学校の誇りです。
校長 大江健規