学び続ける教師

10月6日(月)

この日は午前のみの授業。昼からは、事務職員さんに留守番をお願いし、佐井寺中学校で行われる吹田市立教育センター主催の授業づくり研修(道徳)に全教員で校内研修(校外ですが)として位置づけて参加してきました。

講師は岐阜聖徳学園大学の山田貞二先生。小・中学校両方で教員を経験したのち教育委員会勤務や中学校校長を経て現職に就いておられる方です。教員の時から道徳を研究し、荒れた学校を道徳を中心に再生を目指すなど様々な取組みをされ、現在でも大学でのお仕事以外に全国各地で研修講師や道徳の飛び込み授業をされています。

今回は中学校1年生に対する授業で、学習指導要領に示されている内容項目のうち、「よりよく生きる喜び」「生命の尊さ」を取り扱ったものでした。ねらいは、臓器移植を通して新しい命を得た主人公の心情を考えさえ、生死にかかわる「命」の大切さに気が付かせるとともに、移植体験者の経験から「いのち」を輝かせるにはどうすればよいかについて議論させ、自分自身の人生をより良く生きていこうとする道徳的意欲と態度を養うことでした。

今回はZoomで実際に腎臓の臓器移植を受けた方をゲストティーチャーとして迎えての授業。

読み物資料を事前に読んできている生徒たちにお話しの内容を確認しつつ、ゲストティーチャーに山田先生がインタビューしながら腎臓の病気の辛さや人工透析の大変さを生徒たちが学んでいきます。そして、読み物資料の主人公は腎臓の臓器移植を受けたことで幸せになったということを確認したうえで、ゲストティーチャーにも「臓器移植を受けて幸せでしたか?」と尋ねると、「今は幸せだけど、移植を受けてすぐの頃は幸せではなかった。」という意外な返答が・・・。「え?なんで?」生徒たちは戸惑います。

そこで、山田先生は「なんでゲストティーチャーは幸せじゃなかったんだろう?」と問いかけました。生徒たちは懸命に考え、ペアで様々な考えを交流します。

「亡くなっている人もらっていることがモヤモヤするから」「自分の体になじむかどうか心配だから」「亡くなった人の腎臓だと思うと気持ち悪いから」「亡くなった人からの提供というのは重いから」など...

子どもたちは本当に様々なことを考え、その考えを全体の場でもしっかりと伝えられていました。

そこからさらに山田先生は切り込みます。「亡くなった人からもらうモヤモヤってどういうことかわかる?」

それに対して、生徒たちからは

「移植した人は死んでるのに、自分は生きているから」「自分だけ生きてていいのかと思うから」

などの考えが出されました。

そして、山田先生がゲストティーチャーに幸せじゃなかった理由を尋ねると、

「自分はどんどん元気になっていくのに、どこかで臓器提供者は亡くなっていて泣いている人がいると考えると、不幸の上に自分が乗っているような気がして辛かった。」

とのこと。でも今は幸せだと満面の笑みで答えるゲストティーチャー。

つまりどこかで乗り越えたということなので、山田先生は生徒たちに「どうやって乗り越えたのだろう。」と問いかけます。

「もらったことを悔やんでも亡くなった人は帰ってこないから臓器提供をした人の願いを大切にしようと考えた。」

「亡くなった人のことを思って生きようと考えた。」

「せっかく臓器を提供してもらったんだから楽しもうと思ったから。」

などの考えが生徒たちから出てきました。

さらに山田先生は生徒たちに「辛い時に気持ち切り替えられる?切り替えられるとしたらどうやって?」と問います。

「周りからの支え」「自分の好きなことをする」「家族や友人からの励まし」などの意見が出てきました。

生徒たちが十分考え、自分なりの考えを交流した後、ゲストティーチャーにどうやって乗り越えたのかを聞くと、

臓器移植を受けた人やドナーの家族が集まるドナー慰霊祭という場で、あるドナーの家族の方々から

「もらってくれてありがとう!」

「ずっと元気でいてね!」

「元気になってくれてうれしいよ!」

という言葉をもらったこと、そして、知り合いのお坊さんからの

「ドナーの方は、そこで亡くなるご縁だった。だからあなたが元気になることでドナーの願いが叶う。」

という言葉をもらったことが、切り替えられたきっかけだったとのこと。

その話を聞いている僕も思わず涙があふれてきました。生徒たちも真剣な表情。

振り返りでは、より良く生きることや生命についての自分の考え方や、このように生きていきたいという思いが生徒たちから出されて授業が終わりました。

教材とつながり続け、よく考え、よく語れる素敵な生徒たちでした。そして何より、そのような姿を引き出した山田先生の授業からは学ぶことがたくさんありました。

授業後の講演会では、山田先生から、道徳の授業づくりにおける教材分析の仕方や発問(中心発問、深化発問)の作り方を丁寧に教えていただき、さらに、授業の手法としての役割演技などを体験的に学ばせていただきました。

また、今回のようなゲストティーチャーを活用した授業づくりにおけるポイントについても大変分かりやすく教えていただきました。やはり、打ち合わせが重要だそうです。それは、今回の授業でものすごく伝わってきました。

考え、議論する道徳。北山田小学校でもめざしていきたいです。大変良い学びになりました。佐井寺中学校のみなさん、教育センターのみなさん、そして山田先生、本当にありがとうございました。

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このページは、ウェブ管理者が2025年10月 8日 12:35に書いたブログ記事です。

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