4月14日(火)
「校長先生、授業観に来てくれませんか?」
思わず心の中で「もう?」とつぶやきました。新年度が始まったばかりのこの時期に、先生の方から授業参観の声がかかることは、そう多くありません。その一言に、授業への前のめりな姿勢と、「まずはやってみる」という軽やかな覚悟のようなものを感じました。
今年度最初の授業参観は、1年生社会科。「どんな国があるのだろう」という課題です。1年生のみなさんとは、授業の中での初対面。どんな発言が飛び出すのか、どんなつぶやきが転がるのか、どんな対話が立ち上がるのか......こちらの気持ちも、自然と一段上がります。 冒頭、先生は「世界の国の数は?」と質問されました。答えは「190あまり」 「ん!? あまりって何だ??」いきなりの疑問でした。みなさんも考えてみてください。
授業者は、今年度本校に異動してきたばかりの先生。提示された課題は驚くほどシンプルでした。「国名を、思いつく限り挙げてみよう」。ところが、この一言が授業をぐっと前へ動かしていきます。まずは個人で頭の中をブレインストーミング。その後、ホワイトボードに国名をリレー形式で書き足していくと、先生が問いを投げるより先に、1年生のみなさんの口が動き始めました。「正式名称は?」「どの大陸?」「海に接してる?」「共和国って?」「州って何?」。これから学んでいくはずの地理の視点が、すでに教室のあちこちで芽を出しています。まさに、生徒の疑問が次の学びを連れてくる瞬間でした。先生の声はとても落ち着いていて、大きさも、音域も心地よく、1年生のみなさんのつぶやきをさえぎることはありません。かといって決して放任ではなく、しっかり空気は掴んでおられます。この表現のしようがない間や雰囲気、さすがです。


国名を挙げているだけなのに、気づけば世界はぐんと広がり、地図帳の扱いも変わっていきます。「開きなさい」と言われる前に、いつのまにかページがめくられ、「知っているつもりだったのに」「そんな見方があったのか」と、小さな驚きが連続します。学びの入口には、やはり無理な力は要らないのだと、教室の様子が教えてくれました。
後半はペアワークを軸に対話を重ね、最後はグループワークで「分類」へ。「分類」は社会科では定番の手法ですが、出会って間もないクラスメイトどうしが、ここまで活発に言葉を交わす姿には、思わず背筋が伸びます。「地形」「地域」「宗教」といった視点が自然に生まれ、刺激された私の頭の中では「気温」「言語」「食」「産業」「政治」などが、勝手に合流してきました。


次の時間から、これらを一つずつ掘り下げていくとのことですが、その道のりは決して一本道ではなさそうです。今年度最初の授業参観は、佐井寺中生の学びが、「問いを抱えながら、自分たちの足で進んでいく一年になる」ことを、そっと知らせてくれました。そして今日の先生の立ち姿は、まさに「子どもたちの学びを信じる伴奏者」でした。
教室にあったのは、構えすぎない大人の背中と、遠慮なく問いや疑問をつぶやく子どもたちの姿。その組み合わせが、これからどんな世界地図を描いていくのか――想像するだけで、次のページが楽しみになります。
「どんな国があるのだろう」 とてもとてもシンプルな問いが、学びの扉になっていたのでした。
校長 大江健規
追伸:この文章を投稿しようとしたとき、担当の先生が、「見てください!」と、生徒のみなさんのワークシート持ってきてくれました。楽しみです!
